※断酒164目


30歳をいくつか過ぎたころ、団地に引っ越した。

結婚し長女が産まれたが、嫁は看護師。

ぼくが残業の日と嫁の夜勤が重なると、子どもを見る人がいなくなってしまう。

二世帯住宅を建て、田舎に引っ込んだ。

義母に子どもを見てもらうためだ。


その団地の上の方に家を建てたのだが、家に帰る途中、上り口に小さな鉄板焼き屋があった。

「パンチ」という看板だ。

〇団地にある、現場作業員が集まる店


鉄板焼き 酒

フリーフォト足成より引用


鉄板焼き、といってもメニューはそんなになく、酒を出すのがメインの飲み屋だった。

大将は本業で現場の仕事が終わったら店を始める。

いわゆる副業だ。

奥さんも手伝っていた。


店は、わりと繁盛していた。

夕方、訪れると、仕事が現場作業員の人たちでにぎわっていた。


現場作業員
フリーフォト写真ACより引用


小さい店だが、10人以上いる時もあった。

みな灰色のような作業服だった。

言葉遣いも

オマエ何ようるんなワリャ―ッ!

というような荒っぽい現場言葉が普通で、ぼくもそれに合わせてぶっきらぼうに話した。

たいていぼくより1つか2つ上の年が多く、サラリーマンがスーツで訪れるのは珍しかったのか、大将も客も可愛がってくれた。

〇学校の先輩がいつも来ていたが、黄疸が


ヒトシさん(仮名)という、背は高くないがイケメンの男性がいつも飲んでいた。

話をすると、同じ中学の1つ上の先輩だった。

先輩後輩ということもあり、可愛がってくれた。

ぼくは週に1、2回しか訪れなかったが、ヒトシさんは必ずいた。

聞くと、毎日来ているという。


毎週、金曜日あたりにパンチで飲むのが普通になってきた。

現場系の人たちは、毎日来ているらしい。

一回店に入るとパンチ仲間、つまりパンチーズがなかなか帰らしてもらえず。

嫁からの「帰ってこい」携帯が鳴らないと帰れなかった。


数年経った。


ふと気がついたのだが、ヒトシさんの顔が異様に茶色い

白目も黄色くなっている。

顔がシワだらけだ。

肝硬変 黄疸
フリー素材いらすとやより引用

出会ったときはイケメンと思っていたのだが。

パンチの皆がヒトシさんを呼ぶのも、「ヒトシくん」から「おじいちゃん」に変わってしまった。

それほどの老け方だった。


ある日、パンチーズでビアガーデンに行こう、という計画が持ち上がった。

パンチーズの男連中と、その奥さん子ども20名ばかり、福屋の屋上に集まった。

たまたまヒトシさんの美人な奥さんの向かいに座ったので、

「ヒトシさん、毎日よくのみますねー」

などと軽い会話をしたつもりが、奥さんがボソッと

あの人、B型肝炎で肝硬変になりよるんよ

と言った。

え。

初耳だ。

それなら飲んだらダメじゃないか。

〇B型肝炎なのに治療せずに酒を飲む


インターフェロンの治療しなきゃダメじゃないか。

まだ30代でB型とは、なにかやったな。

「でもね、ぜんぜん言うこと聞かずに、毎日飲んで帰るんよ」

心配そうに言っていた。


今考えたら

・B型肝炎で飲んではいけないのに、治療をしないといけないのに飲む

アルコール依存症だ。


その数年後、彼が40歳くらいの頃。

ヒトシさんの顔はもう、どす黒い茶色になり、白目はまっ黄色になってきた。

しわも増え、イケメンの面影はまったくなく、おじいさんそのものだ。

B型肝炎 治療しない 黄疸
フリー素材いらすとやより引用


冗談で、腹をみせてくれた。

20センチか30センチか、赤ん坊のお腹のように膨れている

腹水だ。

しかし、パンチには毎日飲みに行っている。

ママさんが言うには

「もう死ぬのを覚悟しているみたい・・・・・・」


1年後、彼は亡くなった。

ぼくはアルコール依存症の治療で入院中だったが、葬儀には駆けつけた。

美人の奥さんは、目は真っ赤だったが、すでに死を受け入れているようだった。

中学生の娘さんが2人いた。


未亡人と父なし子を2人作ってしまった。

なぜ肝炎の治療をしなかったのだろう。

答えは簡単、酒を飲めなくなるからだ。


また酒が、悲惨な一家を作り上げてしまった・・・・・・


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