※断酒219日目

閉鎖病棟の日々

ぼくは東京で言えばどちらかというとアメ横や浅草の下町が好きで、妻が好きなディズニーランドなんかには興味がない。

関西方面はというと、いちどは新世界や「あいりん地区」をぶらついてみたかった。

その憧れのあいりん地区で育ったというY君とは、話が合った。

二人とも毎晩夜中というか早朝というか、とにかく3時に起き出してきては話しを始める。

彼は週末にビールを飲むくらいで、アルコール依存症ではまったくない

しかし事件が「酒が原因」だと警察に精神病院送りにされたY君。
むごい。

毎朝、いったい何の話しをするのかというと。

「筋肉」である。

細かく言うと「筋肉をいかにして鍛えるか」である。

「筋肉をいかにしてイジメ抜くか」でもある。

筋肉
フリーフォトPAKUTASOより引用

閉鎖病棟で毎朝語り合う日々

とにかく閉鎖病棟の夜中というか早朝3時から日々筋肉について野郎ふたりが語り合う

それはふたりとも裸だったり、変態同士というわけではない。

ぼくは家から送ってもらった、どうでもいい半パンと長そで姿。

彼はわざと色あせた紺色のGパンと、これも古着のように色あせた元は黒だったであろうTシャツ。

彼はショップ店員のようにオシャレだった。

ふたりは別々の小さなテーブルに掛け、片手にマンガを持ちながら、しかし隣どうしで話す、そういった格好である。


ぼくはボクシングを少しかじっていた。

なので、パンチ力を上げるための広背筋、(首から肩の)僧帽筋、(肩の外側の)三角筋を鍛えあげて、いわゆる “上半身逆三角形” のシルエットになるのだが、彼は違う。

まだ30代半ばだからか、結婚も子どももいないからか、ぼくにはすでに用がなくなった「ファッション」というのにこだわる。
ファッション ジーンズ
フリーフォト写真ACより引用

シュッとした、と、関西では言うのですか。

スレンダーな
、と、一般的には言うのですか。

肩幅はほそく、しかし胸板は厚く。

そうするとTシャツを羽織った時に、彼の理想のシルエットになるのだそうだ。

そのへんの所はぼくはあまり理解できなかったが、とにかく「筋肉を鍛えなければならない」方向ではおおむね意見が合致し、話しあいは順調に進められた。

閉鎖病棟の中で、身のまわりのベッドやイスやそのほかの材料を使用し、いかに筋肉に負荷をかけて鍛えるか

という難題も、互いに意見を出し合い、励ましあい、実行した。

次の日の3時に、いかに筋肉をイジメ抜いたか報告しあった。

そんな感じで、閉鎖病棟の日々は過ぎていった。

気がつくと

「朝食の時間ですよ」

と看護師の声が飛んできたこともあった。

ああ、もう8時すぎてらあや。

ええ?

てことは、夜中の3時から5時間もぶっ続けで筋肉バナシをしてたのか。

やはり変態かもしれない。

とにかく、そんな具合で閉鎖病棟の日々は過ぎていった。

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連れタバコ

タバコは、というと。

これは職場と同じで、気の合う人に声をかけ、人差し指と中指をクチビルに当てたり離したりして

タバコ、行きませんか

合図をし、連れタバコをする。

孤独が好きな終始無言なヤツ、あと適応障害などで皆になじめない人や、どちらかというと嫌われてたりするヤツは一人タバコだ。

アルコール依存症や薬〇の患者たちは世間ではごく普通の人々だったりするので、よく連れタバコになる。

同じ勉強会に出席しなければならないため、アルコール依存症はアルコール依存症同士、薬〇は薬〇同士で「つるむ」ことが多い。
連れタバコ
フリーフォト写真ACより引用

デイルームで時を過ごすにしても、その仲間同士で塊りあっていることが多い。

話しはそれたがとにかくその晩は、ぼくとY君とアル中仲間で連れタバコで喫煙所にいた。

時間は無限にある。

だからといってタバコに次々と火をつけると、タバコ代がとんでもない事になる。

2本くらいで止めて、ベンチに座ったヤツらと話しに夢中になるようにする。

そして急に発作が!

そう。

その晩、なんの話しをしてたのだろう。

なんだったかは思いだせない。

ただただ、夢中になって語っていたのは覚えている。

語っている途中で、とつぜん言葉が止まった。

まだ喋っている途中、話はまだ続いているのだが・・・・・・う・・・・・・あ・・・・・・

声が出ない

脳内で発声したいコトバがぐるぐると回っているのだが、クチが動かない。

声帯が鳴らない。

続けて、身体中のチカラがすべて抜けていくのを感じた。

座っているベンチの、右側に倒れていくのがわかった。
画像20190602倒れる 写真AC
フリーフォト写真ACより引用

急に発作が!

これはいったい何なのか、その時には分からなかった・・・・・・

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